スタッフコラム
恐怖!ヒッチハイカーの呪縛
2021/05/17
■映画には数多のヒッチハイクが存在する。古くはクローデット・コルベールが脚を見せるとすぐ車が止まる有名なヒッチハイクシーンの『或る夜の出来事』、不条理な暴力と怒り、エロスと後味の悪い結末がアメリカ映画とは違う余韻を残したイタリア映画『ヒッチハイク』。『悪魔のいけにえ』ソーヤ一家の三男坊ヒッチハイカーも忘れ難い。近年ではSF『銀河ヒッチハイク・ガイド』などシーンや設定だけでなく、異なるジャンルでも存在するのがヒッチハイク映画だ。■ただ設定故にスリラーや犯罪ものが多く、大体ヒッチハイカー側が異常。アイダ・ルピノが監督した『ヒッチ・ハイカー』も然り、男二人組が予期せぬ殺人鬼を乗せてしまった恐怖を描いたノワールで、6人を殺害した実在のヒッチハイカー殺人鬼”ビリー・クック”の事件が題材。勿論、逆もあり『恐怖のまわり道』は、男が恋人を追ってヒッチハイクで向かうが、同乗していた男が突然死した事で、悲劇の連鎖に巻き込まれてしまう。モノクロの陰影が美しく、物語を回想形式で語るのが面白い。■先日、当館でも上映した『ヒッチャー』は、青年と謎の殺人ヒッチハイカーの死闘を描いたスリラー。雨の似合う男ルドガー・ハウアー演じる妖艶な殺人鬼との恐怖の追走劇。その果てに結ばれる奇妙な絆は、父と子、更には同性愛を勘ぐれる迄の深みへ辿り着く。ヒッチハイク映画の傑作だ。脚本のエリック・レッドはインスパイア元がドアーズの「Riders on the Storm」だと言うが、この曲のインスパイア元は殺人鬼”ビリー・クック”であり、ジム・モリソンは自ら曲より前に「HWY: An American Pastoral」という短編映画を撮り、ビリーをモチーフにしたヒッチハイカーを自ら演じている。■今年『ヒッチャー』はニューマスター版でリバイバル上映され、熱狂的に受け入れられた。その大元には時を巡りビリー・クックがいる。ヒッチハイク映画は必ず最後に降車するが、ビリー・クックは時代を乗り継ぎ、今でも確かに僕らの心に潜んでいる。次にビリーが親指を立てた時、車を停車し、餌食にされるのは誰なのだろうか?
— 平山晋也 検索
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