スタッフコラム
娯楽と芸術、クリント・イーストウッド特集
2004/06/01 — 第93号
◆クリント・イーストウッドは65年に「荒野の用心棒」で初主演を飾り、71年には「恐怖のメロディ」で監督デビューを果たす。以後大きなブランクもなくコンスタントに出演・監督作を発表し続け、90年代以降は1本を除く全ての作品を監督している。◆……と、サラリと書いたが、私がイーストウッドの“作家性”に気付いたのは「スペース カウボーイ」(2000年、遅い!)。ロマンと哀愁がブレンドされた、粋としか言いようのないあのラストシーンに痺れたクチだ。何十回と観た「ダーティー・ハリー」に始まり、常にイーストウッドはスクリーンやブラウン管の中にいた。あまりに身近すぎて作家性や映画技法などは気にしていなかったのだ。◆慌てて近作を見直すと、職人と芸術家を巧みに使い分けるアメリカを代表する映画作家の姿があった。自身のルーツである西部劇の形を借り、飯の種であった“暴力”と向き合ったオスカー作品「許されざる者」(92年)。大ベストセラーの原作イメージを塗り替える完成度の「マディソン郡の橋」(95年)。無駄を省き見せるべきことを見せる、娯楽サスペンスのお手本のような「目撃」(97年)や「トゥルー・クライム」(99年)。改めてどれも見事だ。そしてこの春の賞レースを賑わせた最新作「ミスティック・リバー」(03年)では再び“暴力”と対峙するが、完璧な演技陣を得て、今までにない凄みを帯びた重厚な演出を見せた。◆1930年生まれ。偉大なる映画監督は真摯に歩き続けている。充実の90年代以降の特集は6月12日から。
— 花俟良王 検索
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