スタッフコラム

古典の定石

2005/03/01 — 第111号

古典的な音楽理論に、連続5度、連続8度といった禁則がある。詳しい説明は省くが、要するに「響きが目立ちすぎて浮いてしまうからダメッ!」という和音進行なのだ。クラシック音楽ではバロック・古典派と、このルールは概ね守られてきた。ところがドビュッシーやラヴェルあたりになると、連続5度が平然と使われている。そしてこれらの音楽を聴いてみると、その響きには多少の違和感と同時にことばでは言い表せない気持ち良さがある。連続5度、全然オッケーなのだ。これは定石を破ってこそ得られる成果の一例。◆古典的な推理小説の掟として有名な、ノックスの十戒というものをご存知だろうか? ミステリー作家がやってはいけない10の戒めなのだが、例えばその第1項に「犯人は物語の初期の段階で登場している人物でなければならない」というものがある。これはもっともで、昨年映画化された「○○」という小説はこの掟に従っていないが故にミステリーとしては面白くなかったし、映画も同様だった。その点、昨年のキネ旬ベストワン某外国映画はシッカリ掟を守っており、そのせいでドラマとしてのみならず謎解き部分も堪能できた映画だった。◆しかし、より刺激を求めるファンがいつまでもノックスの十戒を奉っているわけがない。そんなニーズもあり、近年は反則ギリギリのミステリー(スリラー)映画が多く作られている。私も好きな作品が多い。しかし掟破りの方法もマンネリ化して亜流の亜流も増えてくると驚きも半減。基本を押さえたストレートな謎解き映画が恋しくなるというものだ。そこで「ソウ」(3/12〜18)である。刺激的な描写もありキワモノ扱いされがちだが、ノックスの十戒に抵触する箇所も見当たらない、実にオーソドックスなスリラーだ。騙される快感を味わいたい方、是非ご覧ください。

— 関口芳雄 検索