スタッフコラム
魅惑のシネマクラシックス inspired by 山田宏一著「新編美女と犯罪」
2002/02/16 — 第38号
わが心の美女、宮城千賀子が忘れがたい男装の犯罪的ヒロインを演じた時代劇の未完の傑作『神変美女峠』(1951)に語呂を合わせたつもりの拙著「新編美女と犯罪」なのだが、じつは『神変美女峠』は前編にすぎず、別の女優で後編『又四郎笠』が同じ年につくられていたことを識者から教えていただいた。恥ずかしながら、惚れた女優にのみうつつをぬかして、後編があるとはゆめにも思わなかったのである! 歌の文句ではないけれど、思い違いも恋のうち、か。
「映画とは女と銃だ」とD・W・グリフィスは言った。以来、ときにセックスと血、エロスと戦争、美と暴力、等々と言い換えられつつも、映画史はこのグリフィスの定義とともに歩んできた。私もまた、それを「美女と犯罪」と言い換えてみただけだ─映画芸術の父グリフィスに、そして映画史のすべてに、愛をこめ、心をこめ、敬意を表して。
「女の出ない映画ほど寂しいものはない」とフランソワ・トリュフォーは言った。
「美が、肉体が、涙にうるんだ瞳が、愛する女の柔らかい肌の感触が、映画のすべてなのだ」とジャン・ルノワールは言った。
映画館の闇に入りこみ、スクリーンにうごめく光と影に包まれて、モノクロの、あるいはカラーの、めまいのような映像に魅せられ、上昇と下降と追いつ追われつの夢の無限感に陶酔する幸福は映画ファンならではの特権だろう。だからこそ、乱暴な引用だが、艶なる宴の詩人のメッセージをまねて─来たれ、大いなる魂よ! われはきみをよぶ、きみをまねく。
— 山田宏一(映画評論家) 検索
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