スタッフコラム
黒木和雄監督逝く
2006/06/01 — 第141号
今年も、元旦に黒木和雄監督から年賀状が届いた。監督自ら宛名を書き、賀詞は印刷であるが、余白に「よろしくお願いします。」と自筆の添え書きがあった。私の年賀状は、夏恒例の特集番組を今年は、黒木監督の“戦争レクイエム三部作”を中心にした企画を考えている旨を書いて出してあった。数日後、また、黒木監督から元旦に届いた賀状と全く同じ、自筆で宛名を書き、「よろしくお願いします。」と添え書きした年賀状が届いた。◆3月20日、監督協会のイベントのトークショーに来館した時に、黒木監督から「8月の件は、了承しております。」と声をかけられた。間違いなく、二枚目の年賀状は、返事の意味だったのである。その時、8月に公開される新作映画について、「やはり、“あの時代”を撮りました。」と優しい眼差しで話していた。その後、3月25日付消印で、やはり、自筆で宛名を書いた試写状が届いた。それは、松田正隆の戯曲を映画化した『紙屋悦子の青春』である。そんな矢先の訃報であり、吃驚仰天、晴天霹靂である。◆近年の黒木監督は、少年時代の空襲体験に基づいた作品を撮ってきた。今回の新作も、特攻で出撃する青年と、その友や知人の娘との交流を淡々と描いた。黒木監督の言う“あの時代”を描くことにより、“あの時代”を二度と繰り返してはならない、という黒木監督の願望であり、観る者へのメッセージであると思う。黒木監督の願望であり、メッセージをスクリーンを通して、次世代に伝えて行きたいと、黒木監督自筆の三枚のはがきの前で思う。
— 永田稔 検索
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