スタッフコラム

第三のスクリーンは永遠である

2006/06/16 — 第142号

当たり前だが、映画は絶対に映画館で見るべきものである。なぜか?

ビデオやDVDでは、スクリーンと観客が渾然一体となって生み出す「曰く言い難いもの」が決定的に欠けているからである。

その「曰く言い難いもの」は、とりわけ、プログラム・ピクチャーの名脇役がスクリーンに登場する瞬間にあらわになる。というのも、観客は、一瞬間だけ現れてまた消えてしまうその名脇役が姿を見せるとき、客席から身を乗り出して、その脇役の映像を自分たちの眼底のスクリーンに定着しようと試みるからだ。その刹那、観客の眼底のスクリーンが無数に集まって、館内に、いわば第三のスクリーンのようなものが形成される。

この第三のスクリーンこそ、プログラム・ピクチャーの脇役が永遠に生きつづけるヴァーチャルな空間であり、かつては映画館にこの第三のスクリーンがあるからこそ、みなせっせと映画館通いをしたのである。

拙著『甦る昭和脇役名画館』が、まさか本当に上映されるようになるとは、こんなに嬉しい驚きはない! 新文芸坐の「脇役列伝」を見てから死ね!!!

— 鹿島茂(フランス文学者、エッセイスト、コレクター) 検索