スタッフコラム

ほろ苦い大人のファンタジー、『ミッドナイト・イン・パリ』

2013/04/25 — 第278号

当館では5/25〜31、ウディ・アレン監督作『ミッドナイト・イン・パリ』を上映します。大人のファンタジー映画です。新文芸坐のお客様は圧倒的に大人が多いはずです。是非ご覧ください。■思い出すのは、同じくウディ・アレンの『カイロの紫のバラ(1985)』という、ミア・ファローがヒロインを演じた作品。映画のスクリーンから憧れのヒーローが飛び出して、生身のヒロインと恋に落ちる……という、まあ言ってみれば荒唐無稽なファンタジーではあります。しかし結ばれるはずのない二人は、それぞれの世界に戻るのが定め。皆様が想像するとおりの、ほろ苦いラストが待っています。これが普通の大人の映画というものでしょう。■ほぼ同時期に『コクーン』という老人と宇宙人の交流を描いたSF映画がありまして、これには驚きました。老いがテーマであるにもかかわらず、人生の渋味も深みもまったくない、『カイロ…』とは真逆のラスト! 監督はロン・ハワードで、現実逃避のハッピーエンドとしては『スプラッシュ』で前科がありました(これは好き)。今でこそ立派なオスカー監督ですが、そんな時代もあったわけです。■さて『ミッドナイト・イン・パリ』は無論、大人の映画です。しかも苦くて甘い、毒のある映画です。ネタバレできないのでまずは本編をご覧いただくとして、ひと言申し上げておきたいのは、「私には無限の可能性があるんだ。いつか時機が来れば私の実力を世に問うてやる!」というタイプの御仁は、怪我をするぞ、ということであります。自分探しの旅の途にある人は、観ないが賢明です。人生の苦味を知る大人にこそ観て欲しい映画です。

— 関口芳雄 検索