スタッフコラム

記憶喪失の疑似体験「メメント」

2002/05/16 — 第44号

まあとにかく観てください。こんなに知的でスリリングな映画はそう滅多にはないぞ。
◆まず前向性健忘という症状を説明しなくては。この障害、発症する以前の記憶は完全なのだが、新しい記憶を覚えていられないというもの。主人公は妻が殺されたときのショックで発症、10分以上の記憶が続かないのだ。脳裏に刻まれた“犯人への復讐心”が最後の記憶で、それ以降は10分前のことは覚えちゃいない。そんな男の復讐劇とは如何なるものか…。◆監督・脚本のクリストファー・ノーランは、主人公の記憶障害を観客にも疑似体験させるという試みに挑戦し、成功している。観客に見せるシークエンスを並び替えることによって、観客は記憶喪失を体験できるのだ。図に示すと以下のとおり。

時間の流れ ─────────────────────→
場面の順番 — … → ─(4)→ ─(3)→ ─(2)→ ─(1)→

例えば(2)の場面が始まる時点で、主人公は直前の(3)の記憶がない。観客も(3)は見せられていないから知らない。自分がなぜそこにいて、一体何をしようとしているのか? 主人公も観客も“???”状態。「ここは何処?」「オレは今、誰と話している?」「オレは何故走ってる?」「オレはこのメモに何を書こうとしていたんだ?」 各場面は概ねこんな始まり方をする。そして映画の最後=物語の最初には衝撃の…。◆全世界でリピーター続出の「メメント」。7日間の上映ですので、最低2回はご覧くださいね(営業モード)。「メメント」は6/15(土)〜21(金)、「キリング・ミー・ソフトリー」と2本立上映。

— 関口芳雄 検索