スタッフコラム

筒井康隆氏の慧眼

2007/02/16 — 第158号

昨年は『時をかける少女』『日本以外全部沈没』『パプリカ』と、筒井康隆さんの原作が3本も映画化されました。最もヒットした『時をかける少女』はアニメーションにもかかわらず観客の年齢層が広く、私の世代も多く劇場に足を運んだようです。私が筒井作品を読んだのは中学生の頃、ショートショートが初めてだったと思います。■私の筒井ベスト作品は、“七瀬三部作”の第二部にあたる「七瀬ふたたび」です。それぞれ予知能力・時間移動・念動力・透視などの力をもった超能者たちのドラマなのですが、これがSFなのに人間の心情がとてもリアル。そして、文庫版あとがきで某氏もふれられていましたが、この作品のエライところは、主人公の能力が物理的な戦力ではないという点です。七瀬の能力は、精神感応能力(テレパシー)。つまり数ある能力の中で、“情報力”を主人公に選んだことが慧眼なのです。30年以上も前の作品です。■いつの頃からか、記憶障害にまつわる映画が増えています。『明日の記憶』『博士の愛した数式』(3/19上映予定)『私の頭の中の消しゴム』と泣かせる系から、『メメント』『unknown/アンノウン』などサスペンス系まで多々あります。私は後者が好きなのですが、これら記憶喪失サスペンス作品の面白さはどこにあるのでしょうか? それは情報の扱い方にある思うのです。主人公の知っている情報、知らない情報。敵方の持っている情報、知らない情報。そして観客に与えられるべき情報、隠しておくべき情報。これら情報のコントロールが上手になされている脚本は、本当に面白い。逆に、観客にだらだらと小出しに新情報を提供していくだけなおバカな謎解き映画の、なんと退屈なことか! あぁ、久しぶりに“七瀬”読み直したくなった!!

— 関口芳雄 検索